新しい年が始まり、みなさんは今年の健康目標を立てたりされたでしょうか。
何か始めたいけれどイマイチ何を目標にすればよいかわからない、という方は健康診断の結果を参考にしてみてはいかがでしょう。健診結果の中にはみなさん自身の有用な健康データが詰まっています。
今回は健診結果のよみ方を解説し、健診結果を有効に活用するお手伝いをしたいと思います。
①健診結果の見方
・一つの検査項目が異常値を示しても病気だと診断できるものではありません。種々の検査結果の「総合判定」をまず目安としましょう。
・測定方法や測定機器、測定機関などによって測定値や基準値も異なります。別の医療機関の間で検査結果を比較する場合には注意が必要です。
・各検査の目的や基準値・異常値の意味を理解しておく必要があります。
それでは主な検査からわかることと基準値の考え方について解説していきます。
〈主な検査項目〉
検査からわかることをおおまかに把握しておくと、健診結果がぐっとよみやすくなります。
〇血圧:高血圧・低血圧がわかります。高血圧は脳卒中や心筋梗塞の重要な危険因子の一つです。
〇心電図:心臓のリズム(不整脈の有無)・心臓の筋肉の病気(心肥大・狭心症・心筋梗塞など)がわかります。
〇血液
・白血球数:細菌やウイルスなどに感染していないかがわかります。
・赤血球数・ヘモグロビン・ヘマトクリット:貧血の有無がわかります。
〇糖代謝
・空腹時血糖:糖尿病の診断に必須です。
〇脂質
・中性脂肪:動脈硬化のリスクです。メタボリックシンドロームの診断基準として重要です。
・総コレステロール:脂質代謝異常の重要な指標です。肝臓・腎臓の病気や糖尿病の状態によっても影響されます。
・HDLコレステロール(善玉コレステロール):心筋梗塞や脳梗塞といった動脈硬化が原因として起こる病気のリスクの目安です。数値が低いほど発症するリスクが高くなります。
・LDLコレステロール(悪玉コレステロール):心筋梗塞や脳梗塞のリスクの目安です。数値が高いほど発症するリスクが高くなります。
〇肝機能
・AST(GOT)、ALT(GPT):急性肝炎、慢性肝炎、肝障害、筋肉の病気などがわかります。
・γ-GTP:急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変などがわかります。
〇腎機能
・クレアチニン:腎機能障害の指標で、腎機能が低下すると値は上昇します。
〇呼吸機能
・胸部X線:肺の病気(肺がん、肺結核、肺炎など)の診断に有用です。
〇消化器系
・上部消化管X線検査(バリウム検査):上部消化管内腔面の凹凸の違いから異常所見(がん、潰瘍など)の有無がわかります。
〈数値の見方〉
検査の基準値は一般に健康であると考えられる人々の年齢や性別に相応した平均的な数値です。
検査値には個人差があり、朝と晩、季節、その日の体調、ストレスなどによっても微妙に変化するので、細かい数値にあまり神経質になる必要はありません。
また、いつも基準値より少し高めを示す項目があり今回も高めという場合はあまり心配いりませんが、同じ値でも前年の値と比べて大幅に高くなっているという場合は要注意です。つまり被検者自身が健康な時に示す健常値を基準にして高いか低いかなど判断するのがより良いと考えられます。
☆「基準範囲」と「臨床判断値」
専門医にかかられている方で、先生に言われている目標数値と健康診断の基準値が違うなあと感じておられる方も多いかもしれません。
これは健診で用いられる「基準範囲」が健常人から得られた検査値を多数集めて、その分布の中央約95%の範囲をとったもので、治療の目標などを考慮して作成されたものではないからです。
治療の現場で使われるのは「臨床判断値」といって、疫学的調査(何かの病気の人を長期的に調査・分析し、その原因を探り、病気を予防することを目的とする調査)に基づいたもので、将来において病気の発症が予測され、予防医学的な対応が求められる数値なのです。
②検査結果を健康に生かすために
せっかく受けた健診の結果を日々の健康につなげていくために大切なことをまとめてみましょう。
〇健診は毎年欠かさず受け、結果は必ず保管しておきましょう
→検査結果は1回だけの数値ではなくその経過を見ることがより大切です。前年との数値を比較して大きく変化した項目があったら要注意です
〇家族歴を考慮しましょう
→親族の人に何か病気があったら、その病気の素因を持っている可能性もあるので、その病気に関連する項目の数値が上昇したときは医師に相談しましょう
〇検査結果は素直に受け止め、再検査を受けましょう
→心配で再検査を受けなかったり、自己判断で放置するのでは、検査の意味がなくなってしまいます
→病気の兆候となる症状が出たときに「この間の健診で問題がなかったから」と病院を受診しないと病気を悪化させてしまうことになりかねません。健診でわかることの限界を正しく理解することも重要です
③生活習慣病とメタボリックシンドローム
日本人の死因の半数以上が悪性新生物(がん)や心疾患・脳血管疾患といった生活習慣病が原因で起こるものであることはご存じの方も多いと思います。また国民医療費の約3分の1が生活習慣病で占められているといいます。
こんな身近で誰にでも起こり得る生活習慣病を発症前に防ぎ、生活習慣を改善する意識をもつことも健診の大事な目的の一つです。
ここからは生活習慣病とメタボリックシンドロームについて解説するとともに、メタボ脱出のための対策を見ていきましょう。
〈メタボリックシンドロームとは〉
内臓脂肪による肥満の人が「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」といった生活習慣病になる危険因子を併せ持っている状態のことです。
〈メタボリックシンドロームの診断基準〉
①腹囲:男性85㎝以上、女性90㎝以上である
②①に該当し、かつ次の3つのうち2つ以上該当する
・高血圧:収縮期血圧130㎜Hg以上 または 拡張期血圧85㎜Hg以上
・高血糖:空腹時血糖値110㎎/㎗以上 または HbA1c6.0%以上
・脂質異常:中性脂肪150㎎/㎗以上 または HDLコレステロール40㎎/㎗未満
〈生活習慣病の進行〉
次に生活習慣がどのように病気を引き起こしてしまうのか解説します。
〇生活の悪習慣
「食べすぎ・飲みすぎ」「運動不足」
「喫煙」「睡眠不足」が続く
⇒〇「内臓脂肪」のたまりすぎにより問題が発生
・高血糖を起こす ・血圧を上げる ・血栓を作りやすくなる ・善玉コレステロールが減る
⇒〇メタボリックシンドロームとなり、血管が傷ついていき自覚症状なく「動脈硬化」などが進行
(この段階で気づけばまだ予防できます)
⇒〇動脈硬化が進行し重症化、命に関わる深刻な病気を発症
(心臓病・脳卒中・糖尿病合併症)
※動脈硬化とは・・・血管壁にコレステロールがたまって狭くなり、血液の流れが悪く詰まったり、硬く破れやすくなったりする状態です
〈「内臓脂肪」を減らすには〉
内臓脂肪が蓄積する原因は「過栄養」と「運動不足」です。内臓脂肪はたまりやすく、分解されやすい脂肪です。
このことから、食事で摂りすぎのエネルギーを減らす、運動で消費するエネルギーを増やすことをバランスよく取り入れることが効果的です。
体重を約3%減らすと腹囲や体型だけでなく、内臓脂肪が減って血糖・脂質などの検査データが改善されてきます。
目安にしてみてください。
〈メタボに効果のある生活習慣〉
「食行動の改善」「活動量の増加」「ストレスの解消」の3本柱で具体例を紹介します。
当たり前のことが多いですが実践するのはなかなか難しいものです。
①食行動の改善
・1日3食バランスよく食べましょう
・よく噛んで姿勢をよくして食べましょう(食べすぎ・消化不良を防ぎます)
・野菜を350g以上食べましょう(先に食べると血糖値の急激な上昇を抑え、吸収を抑制します)
・朝食を摂り、夜8時以降は食べ物を口にしないようにしましょう(脂肪をため込みやすい時間帯です)
・毎日1回以上魚を食べましょう(質の良い脂肪をとることで動脈硬化の防止につながります)
・お菓子やアルコールは1日の総カロリーの1割以下を目安にしましょう(男性250kcal、女性200kcal)
②活動量の増加
・徒歩または自転車で通勤・買い物をしましょう
・車や電車利用の時は少し遠くに駐車する、一駅手前で下車して歩くなどしてみましょう
・エレベーター・エスカレーターを使わず階段を使いましょう
・テレビを見ながら筋トレ・ストレッチをしましょう
・「+10分」体を動かすように心がけましょう
③ストレスの解消
・温かい飲み物をゆっくり飲みましょう
・お風呂にゆっく浸かりましょう
・スポーツ観戦、音楽鑑賞、カラオケ、山登りなどの趣味を持ちましょう
(参考文献等:矢冨裕、野田光彦編著『最新 健康診断と検査がすべてわかる本』 /
公益財団法人SBS静岡健康増進センター編「どうして怖いの?メタボリックシンドローム」)
みなさんの健康目標は決まりましたか。
健康情報があふれ、耳にする健康用語も増えましたが、本当に自分にとって必要なものは何か、健診結果をよくよむとわかってくるのではないかと思います。
次回は検査項目の中でもみなさんの関心が高い「コレステロール」について詳しくみていきたいと思います。
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