今年も残すところあと1週間になりました。
年末は大掃除や買い出しなど体を動かす機会も多いと思いますが、少しでも楽に仕事ができれば嬉しいですよね。
今回は体本来の構造に即した「疲れない動き方」について、窓拭きや買い物など具体的な場面でご紹介していきたいと思います。
○“よい姿勢”とは
一般的な“よい姿勢”というと、背すじをピンと伸ばす「気をつけ」のような形を思い浮かべる人が多いと思います。
図のように後頭部・背中・お尻・かかとの4点を壁につける姿勢は一見よい姿勢に見えますが、実は本来の体の構造に反した「しんどい(つらい)」姿勢なのです。
本来の体の構造は図の左のように、
①背骨は背中側でなく真ん中にあります
②本来、お尻は背中より後ろに出ています
③座骨はお尻ではなく、股の間にあります
④かかとの骨はお尻より前にあります
つまり図の右の姿勢は、全体的に後ろに重心が集まっているため、背面の筋肉に負担がかかっているといえます。
筋肉の力に頼らず、骨でバランスをとると力が抜け楽に立つことができるのです。
○“疲れない姿勢”をイメージでつくる
目標は「筋肉のムダな力から体を解放して骨で立つ」ことです。
そのために何かをするのではなく、思い込みやイメージを改めて無駄な力(悪いくせ)をやめるようにします。
注意することは、体の力を無理に抜こうとしたり、よい姿勢をつくろうとしないことです。(意識した瞬間に、無意識に背中やお腹、下半身の筋肉に力が入ってしまうからです)
体の固定概念を捨て、新たに正しいイメージを植え付けることで、自然にリラックスした楽な姿勢に移行させていきます。
まずは基本の「疲れない座り方」「疲れない立ち方」「楽な立ち上がり方」を見ていきましょう。
〈疲れない座り方〉
ポイント1「背骨は背中側でなく真ん中にある!」
背中にボコボコがあるので背骨は背中にあると思いがちです。すると、背中を意識しすぎ、背面の筋肉が緊張してしまいます。背骨は思っているよりも体の中心にあるので「体を中心で支える」イメージを持ちましょう。
ポイント2「座骨はお尻ではなく股の間にある!」
座骨はお尻側にあるように思いがちですが、横から見ると実際の座骨は前に向かって湾曲しているので事実上股の間にあります。股の間の座骨を土台に、中心の背骨のラインをつくり、その上に頭をのせるイメージで座ります。
ポイント3「あごと首の距離を離す!」
よい姿勢というとあごを引いて首との距離が短くなりがちですが、背中が丸まりやすく、胸が閉じて呼吸も浅くなってしまいます。自然に前を見て座ることで肩の力が抜け、猫背や反り腰になりにくく、胸が開いて呼吸が楽になります。
〈疲れない立ち方〉
ポイント1「腕はぶら下がっているだけ!」
頭を座骨にのせることだけ意識していればよく、腕のことは考えなくてよいのです。腕は自然にニュートラルな位置に収まります。
ポイント2「ひざの皿はひざではない!」
ひざをイメージするとき、ついひざの皿がひざと考えがちですが、実は体を支えるのはお皿ではなく、その下のひざ関節です。図のように両手でつくった円くらい大きいので、固めなくても安定します。ひざは張らずにやわらかくしておきましょう。
ポイント3「しっかり立とうとしない!」
すでに体重が下にかかっているので踏みしめる必要はありません。全身が硬くなり逆に安定しません。頭・背骨・座骨ラインの終点「土踏まず」の上にふんわり立ちましょう。
ポイント4「呼吸は常に鼻でする!」
深呼吸は鼻から吸って口から吐くもの、肺は胸の前側だけにあると思いがちです。しかし口は呼吸のための器官ではなく、鼻呼吸が基本で、リラックスにもつながります。また、肺は肋骨いっぱいまであるので、背中側にも空気はまわります。
〈楽な立ち上がり方〉
1.立つのは足裏の延長線上であることを知りましょう
(頭を座骨にのせる基本姿勢からはじめます)
2.前に向かって立ちましょう
(上ではなく前に向かって立てば、足裏に素早く重心が移るので楽に立てます。折り曲げるのは腰ではなくビッグマウスです。)
☆体を折り曲げる部位「ビッグマウス」とは・・・
腕を伸ばした手の指を曲げたあたりのラインにあるお尻の筋肉で、“大きな口”のような付き方をしています。体を折り曲げるために適した形状をしています。
○日常を楽にする4つの基本
具体的な場面を挙げて体の使い方をご紹介していく前に、すべての基本となる「4つの基本」についておさえておきたいと思います。
あくまでイメージは「ふんわり、ゆったり。」です。
心が力むと体にも必ず力みが生まれるからです。
[基本1] 座骨は股の間
上半身の土台となる座骨は股の間、かつお尻側でなく前にあります
[基本2] お腹の真ん中に背骨
体を横から見ると、背骨は腹部のほぼ中心を通っていることがわかります
[基本3] 飲み込むところのすぐ後ろに首の骨
食道のすぐ後ろに首からつながる背骨のラインがあることを意識しましょう
[基本4] 頭をふんわりのせる
座骨・背骨・首の骨という積み木の上に頭をふんわりのせてソフトにバランスをとるイメージを持ちましょう
○年末に使える「疲れない体の使い方」
ここからはいよいよ具体例をご紹介してきたいと思います。
実際に試していただくとなるほど!と思っていただけるのではないでしょうか。
〈重い荷物を持ち上げる〉
ポイント「距離感をつかみ、ビッグマウスを折り曲げる!」
1.荷物との距離をつめます
(両脚の間に荷物がくるくらいまで。頭ふんわりの姿勢をとる。)
2.ビッグマウスを使ってお尻を後ろに出します
(腰は曲げず、ビッグマウスを使う。後は前に向かって立ち上がる。)
〈台所仕事をする〉
ポイント「頭ふんわりで、調理台の空間を確認!」
1.頭ふんわりの基本姿勢を整えます
2.空間・距離を確認し、必要な分だけあごを引きます
(少しあごを引くだけで下は見える。腰を曲げたり反ったりせず、作業台に正対する必要はなく、利き手側の足を引いて半身になる。)
〈窓を拭く〉
ポイント「腕のしくみを理解し、下半身の力を利用!」
1.腕の力の構造を理解します
左図 ①親指&大胸筋ライン ②小指&肩甲骨ライン
(内側に動かすときは②小指~肩甲骨、外側に動かすときは①親指~大胸筋側に力が働く)
2.足を使って体重移動を利用します
(図のように、内側に動かすときは小指側に力を入れ、力の方向に合わせて体重移動する)
〈床を拭く〉
ポイント「頭ふんわりで、体重移動を利用する!」
1.基本姿勢を整えます
(腰を曲げず、頭を座骨にふんわりのせる)
2.体重移動を利用します
(腰は丸めず、下半身の前後移動を利用して、腕の負担を軽くする。左右に拭くときは窓を拭くときと同様に体重移動を利用する)
〈重い買い物袋を持つ〉
ポイント「荷物は“胸”で吊り上げる!」
1.頭ふんわりの基本姿勢を整えます
(腕は胸骨を中心にふんわりぶらさがっているイメージ)
2胸骨で吊り上げるイメージを持ちます
(使うのは袋の持ち手を握る力だけで、腕の力は不要。重さは胸骨にかかるが、中心にある背骨の強い力で支えられる。)
○番外編:ぐっすり眠ってすっきり起きる体の使い方
〈楽に起き上がる〉
ポイント「頭から座骨までのラインをつくって起きる!」
1.頭から背骨・座骨のラインを整えます
(体が縮こまったままだと力みやすい)
2.腕を使って、スッと起きます
(体のラインをキープして、無駄な力みなく最小限の力で起き上がれる)
※ベッドの場合は足を下ろしながら起き上がると反動を利用できるのでさらに楽です
〈寝る姿勢が定まらない〉
ポイント「寝返りは一度体を伸ばす!」
1.4つの基本で力を抜きます
(頭はふんわり、胴体の縮こませをやめる。落ち着いたら寝る姿勢は自由。)
2.寝返りは一度胴体を伸ばすと楽です
(無駄な緊張が抜ける)
(参考文献:木野村朱美著『イラストでわかる疲れないカラダの使い方図鑑』)
ご紹介した動き方をいくつか試していただくと、スポーツ選手がイメージトレーニングを行うことの意味が分かる気がするのではないでしょうか。
人間本来の体のあり方をイメージするだけで、本来の健康で動ける体が再現されるのは不思議で面白いことだと思います。
さて本年も最後までおつきあいいただきありがとうございました。
来年も株式会社ミックと弊社店舗をよろしくおねがいいたします。
みなさん、よいお年をお迎えください。
ワークステーション静岡 T