厳しい暑さをしのぐために、省エネよりエアコンの使用を推奨されるような夏が続いていますが、
少し涼しくなってきたら自然の涼しさをとり入れて省エネに快適に過ごせたら、地球にも身体にもやさしいのではないでしょうか。
そこで今回は、涼しく住まうための工夫を見ていきたいと思います。
最初に、省エネに快適に夏をすごすための5カ条をあげてみます。
①日ざしは外側で防ぐ
②室内の発熱を抑える
③風を通して熱を逃がす
④家の周りを冷やす
⑤冷房の効果をあげる
①②に対しては「暑さを入れない」工夫、③④に対しては「冷たさを入れる」工夫、⑤に対しては「エアコンとのかしこいつきあい方」をそれぞれご紹介していきたいと思います。
《暑さを入れない工夫》
○日ざしをさえぎる

・窓の上でさえぎる
軒やひさし、あとから取り付けられる日よけなどで、夏の昼間の高い位置からさしこむ日ざしをさえぎりましょう。(太陽が最も高くなる夏至の角度を目安にするとよいでしょう)
・窓の外でさえぎる
窓の外にブラインドやすだれ、よしずを置いて、朝夕の東西から低い角度でさしこむ日ざしをさえぎりましょう。(カーテンでは放射熱をさえぎることができません)
・照り返しをふせぐ
窓の前の地面に芝生を植えたり、すのこを置いたり、外壁を植物でおおうことで、照り返しの光と熱をふせぎましょう。
☆すだれなどで家の外側から日ざしを防ぐ場合の節電効果(エアコン)→削減率10%
○室内の熱を小さくする

この図をみると、家電(照明やテレビ、パソコン)の発熱が暑さをつくり出していることがわかります。
涼しくすごすためにはこれらの室内で発生する熱を少なくすることが大切です。
昼間はできるだけ自然の明るさで作業をしたり、テレビやパソコンはこまめに電源を切るなど工夫をすると、涼しさをつくり出しやすく省エネにもなります。
☆日中に不要な照明を切った場合の節電効果(エアコン)→削減率5%
○伝わる熱をふせぐ
建築段階で断熱の工夫がされています。
屋根や壁の材料を厚くして熱の伝わり方を遅くしたり熱が伝わりにくい材料が使われたりしています。
《冷たさを入れる工夫》
○風を通す
風通しがよいと家の中の暑さの原因となる熱や水分を外に出して、家の外にある「冷たさ」をよびこむことができます。(室内より外の気温が低いとき)
ここで窓のある位置と風の流れを考えることが大切です。

・風の入口と出口をつくる
1つの窓を開けたら通り抜ける先の窓も開けましょう。
むかいあう位置にある窓を開けると風が速やかに流れます。
・風の通り道をつくる
風を通したい場所のつながりを考えて、窓や戸の開け方や家具の配置を工夫して、家の中全体で風の通り道をつくりましょう。

・風の出口を高くする
風がほとんどない日も、温度差がつくる空気の流れを利用して上下の空気の流れをつくりましょう。(空気は暖まると上にのぼる性質があるので、高い窓があると空気は上に向かってゆるやかに移動します)
○窓の形
建築段階で風の流れを考えて住まいに合った窓が選ばれています。
下図のように窓の形によって風の流れを調節することができます。

・引きちがい窓
戸を左右に引いて開ける窓。
開け閉めがしやすく、風を入れる量を調節しやすい。
・上げ下げ窓
戸を上下に動かして開ける窓。
風を入れたい位置を調節することができる。
・押し出し窓
戸を外側に押し出して開ける窓。
外に出たガラス面に当たった風を室内に入れることができる。
○緑と水でつつむ
・庭に植物を植える
南や西側には、夏は日ざしをさえぎり冬は葉が落ちて日が入る落葉樹、
北側には夏は日かげを作り冬は北風をふせぐ常緑樹を植えるのがおすすめです。
・芝生などの草地
昼間は日ざしの照り返しをふせぎ、夜にはまわりの空気を冷やします。
※植物の葉から出た水蒸気を含む空気は気化熱によって冷やされているので、まわりの温度も下がります。

・グリーンカーテンを作る
ゴーヤやヘチマなどの葉が大きいつる性植物が向いています。
5月上旬ごろから苗を植えましょう。
・打ち水
朝夕の日が高くない時間に水をまくと、水が蒸発するときに地面の熱を奪う気化熱によって地面の温度を下げます。
●昔の家屋の涼しい工夫

縁側:屋根が大きくはり出した「軒」の下のことで、野菜を干したりこしかけて話をしたりする空間でした。昼間は強い日ざしをふせぎ、夜は風鈴をつるし夕涼み・・・日本の夏の風景です。

・欄間(らんま):障子やふすまと天井の間にある、細長い部分のこと。目線のあたりはふすまで仕切っていても、上にあるあたたかい空気は通るので風の流れを止めずにすみます。

・簾戸(すど):簾を組み込んだ戸。室内に風を通しながらも視線をほどよくさえぎります。
《エアコンとのかしこいつきあい方》
エアコンを効果的にかつ省エネしながら使うポイントです。
①日ざしを調節する
(家に誰もいない昼間の時間帯はカーテンやブラインドを閉めて出かけましょう)
②風を入れて調節する
(エアコンを付ける前に窓を開けて風を通し、部屋にたまったむし暑さをにがすと早く冷えます)
③空気の流れを調節する
(吹きだし口の風向きを平行にして天井から壁に沿うような流れをつくるとよいでしょう)
④建物にあわせて調節する
(断熱材や建物の構造によってエアコンによる冷え方もちがいます)
⑤人にあわせて調節する
(人による体感温度のちがいや室内外の気温差に気を配りましょう)
☆エアコンの設定温度を28℃で固定して使用する場合の節電効果→削減率10%
(参考:鈴木信恵著『図解こどもエコライフ 暑さとくらし』/ HP;環境共生住宅推進協議会「住む・暮らす」)
住まいの事情で工夫できることが限られるかもしれませんが、家電の使い方や風の通し方、植物を置くことなど、ちょっとしたことで涼しさを感じることができます。
窓を通り抜けていく風に、秋の気配をいち早く気づくことができるかもしれません。
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