ちょうど一年後の7月24日、いよいよ東京オリンピックが開催されます。
これにさきがけて様々なプロジェクトが各地で行われています。
たとえば、不要になった携帯やパソコン、デジカメなどのリサイクル金属を全国から集めてオリンピックのメダルを作るプロジェクト。
パラリンック競技を体験して、競技の大変さやパラリンピアン(出場選手)のすごさを体感できるイベント、「ノーリミッツチャレンジ」。
今回は1年後の大会に思いを馳せながら、まだまだ知られていないパラリンピック競技の魅力をご紹介したいと思います。
これはパラリンピックのシンボル「スリー・アギトス」です。
五輪のマークと違って、あまり知られていないかもしれません。
「アギト」とはラテン語で「私は動く」という意味で、困難なことがあってもあきらめずに限界に挑戦し続けるパラリンピアンを表現しています。
様々な身体の障がいや知的障がいのある選手が参加する大会―「パラ(並んで立つ)」+オリンピックでオリンピックと対等なもの、「パラリンピック」と名付けられたそうです。
パラリンピック競技にはオリンピック競技にはない特徴とみどころがあります。
みどころ① 競技のクラス分け
2020年パラリンピックでは22競技540種目に約4400人の選手が参加する予定だそうです。
「540種目」というのは多いと感じるかもしれませんが、障がいの種類や程度でクラス分けをし、ひとりひとり違う障がいが勝負の結果に与える影響をできるだけ小さくするための仕組みです。
たとえば陸上競技では「視覚障がい」「下肢切断」「脳性まひ以外の車いす」の3グループが、さらに障がいの程度によってクラス分けされます。
また団体競技では障がいの程度によって持ち点を決める「ポイント制度」が採用されています。
障がいの程度が異なる選手が1つのチームを組んで競技を行うため、障がいの程度を持ち点に置き換え、1チームの合計点が上限を超えないようにチームを作ります。
たとえば車椅子バスケットボールでは1チーム5人で14点以下と定められています。
みどころ② パラスポーツの用具
パラスポーツの用具にはスポーツ義足・義手、各競技に合わせた車いすなどがありますが、これらの精度や相性によって選手の成績に大きな影響があることは想像できます。
反発力をばねにした走りやすいかたちに工夫された「J」型のトラック種目用義足や、
すばやい動きができるように車輪が八の字型に取り付けられた車いすなど、ありとあらゆる工夫がされています。
こういったすばらしい用具を提供する技術者と選手の関係にもドラマがありそうです。
みどころ③ 選手を助けるサポーター
視覚障がいのある選手が出場する競技では、選手を助けるサポーターが大活躍します。
たとえば陸上競技では、トラック種目やマラソンで「ガイドランナー」と呼ばれる伴走者が選手とひもを握り合い、コースを外れないように声かけします。
またフィールド種目では「コーラー」が声を出したり手を叩いたりして、踏みきり位置や方向を伝えます。
競泳では安全かつ効率的にゴールやターンを行うために「タッピングバー」を使って選手に触れ、壁が近いことを知らせます。
パラリンピック競技には、魅力的な競技がたくさんありますが、なかでも特徴的で観戦していて面白い2つの競技をご紹介したいと思います。
《ボッチャ》
ボッチャは重度脳性まひの人のための競技で、どれだけ多くのボールを白の「ジャックボール」(目標球)に近づけられるかを競う、カーリングと似た競技です。
先攻の選手がまずジャックボールを投げ、続けて自分のボールをジャックボールに向かって投げます。
後攻の選手もボールを投げます。
手持ちのボールがなくなるまで投球し、ジャックボールに近いボールの選手に得点が入ります。
自力でボールを投げることができない選手も「ランプ」というすべり台のような補助具を使うことができます。
ジャックボールをどこに投げるかによって試合展開が変わり、最後の最後まで逆転の可能性があるところがみどころです。
《ゴールボール》
視覚障がいの選手が「アイシェード」という目隠しを付けて、ボールに入っている鈴の音や足音をたよりにボールのコースを把握し、味方のゴールを守る競技です。
障がいの程度による有利不利を避けるため選手は全員アイシェードを着用します。
1チーム3人がプレーし、攻撃側は鈴の入ったボールを幅9mのゴールに向かって転がし、守備側は3人でゴールを守ります。
コートのラインには、ラインの下にたこ糸が通してあり、糸の凸凹を感じることで位置を確認できます。
攻撃側は移動やパス、ボールに回転をかけるなどして守備側をかく乱し、
守備側は華麗なチームワークでゴールを守ります。
選手たちが音だけをたよりにプレーしていることを忘れてしまうようなプレーは見応えがあります。
(参考文献:陶山哲夫監修『パラスポーツルールブック』/ 山岸朋央著『東京パラリンピックとバリアフリー②』)
1年後の今頃は、世界の人たちが日本にやってきて共にスポーツの祭典を楽しんでいるのだと思うとわくわくします。
オリンピック・パラリンピックをきっかけに、様々なスポーツや様々な国の人々のことを知り、
大会のための一時的な開発ではなくより良い街や環境を作ることで、
日本中が多方面で少しでも豊かになるとよいなと思います。
ワークステーション静岡 T